貸家建付地の相続税評価と小規模宅地特例の適用について

貸家建付地

遺産中に貸家とその敷地がある場合、貸家建付地に該当すれば、敷地の相続税評価額が抑えられます。そのためには、実際に借家人がいることが条件ですが、借家人がいなくても例外的に貸家建付地となる場合もあります。また、要件を満たせば、小規模宅地特例を適用して、貸家建付地としての評価額からさらに評価額を下げることができます。

目次

貸家建付地とは?

貸家建付地とは、自分の所有する土地に建物を立てて賃貸している場合の、その土地のことです。貸家建付地の相続税評価額は、その土地を自分自身で使用している場合の評価額(自用地評価額)よりも低くなります。

貸家建付地の相続税評価

貸家建付地の評価額は、自用地評価額から借家人の敷地利用権に相当する額を控除した額になります。敷地利用権相当額は、自用地評価額に借地権割合を乗じた額に、借家権割合を乗じ、さらに賃貸割合を乗じて算出します。

借地権割合と借家権割合

借地権割合は、国税庁のウェブサイトの路線価図又は評価倍率表で調べることができます。借地権割合が設定されていない場合は、借地権割合はゼロとなり、貸家建付地の評価額は自用地評価額と同額になります。

借家権割合は、全国一律30%と定められています。

賃貸割合

賃貸割合とは、賃貸用建物の総床面積に占める実際に貸し出されている借家の床面積の割合です。一棟の建物全体が賃貸用の物件であっても、被相続人が亡くなったときに空室があれば、原則として、その部屋は、賃貸割合の算出においては貸家となりません。例えば、賃貸用物件の総床面積が500㎡で空室の床面積が50㎡の場合、賃貸割合は、90%となります。

一時的な空室

相続開始時に空室であっても、それが一時的の場合、その部屋も賃貸割合の計算に入れることができます。一時的な空室か否かは、その部屋が継続的に賃貸されていたか、空室になった後賃借人の募集が行われたか、などの事実関係から総合的に判断します。

貸家建付地の相続における注意点

賃貸併用住宅の場合

建物に自宅部分と賃貸部分がある場合、その敷地は自宅用と賃貸用に区分して評価します。貸家建付地として評価できるのは賃貸用の敷地のみで、自宅用の敷地は自用地として評価します。自宅用と賃貸用の敷地を区分は、建物の総床面積に占める自宅部分と賃貸部分の割合によります。

駐車場として貸している場合

土地を貸し駐車場にしている場合、駐車場用の建物を建てていたとしても、その建物は貸家には分類されず、その土地は貸家建付地としては評価されません。

しかし、駐車場と貸家を一体として賃貸していると評価できる場合には、貸家の敷地と駐車場の土地を合わせて貸家建付地として評価することができます。

賃料が低い場合

建物を貸していても賃料の支払いを受けていない場合や賃料が低額の場合には、その敷地が貸家建付地として評価されない場合があります。貸家建付地として評価されるためには、最低限、建物の固定資産税と維持管理費を超える賃料の支払いを受けている必要があります。一般的には、固定資産税の2~3倍以上の賃料でなければ、貸家建付地として評価することは難しいといわれています。

貸家が建替中の場合

被相続人が貸家を建替中に亡くなった場合、土地上の建物を賃貸しているとは言えないので、原則として、その土地は、貸家建付地としては評価されません。

しかし、建替前の借家人が建替後も引き続き入居するとの契約が締結されているなど、建替前の借家人の借家権が立替後も継続していると認められる場合には、貸家建付地として評価できます。

建物が共有の場合

土地は被相続人の単独所有で、建物は被相続人(例70%)と他者(30%)との共有である場合は、建物の共有割合に応じて土地を区分し、被相続人の建物の持分に応じた敷地(70%)は貸家建付地として、他者の持分に応じた敷地(30%)は自用地として評価します。

土地が共有の場合

土地が共有で、建物は被相続人の単独所有の場合、被相続人の持分全部を貸家建付地として評価します。

土地と建物が共有の場合

土地と建物が共有で、土地の共有割合と建物の共有割合が同じ場合、被相続人の持分全部を貸家建付地として評価します。

被相続人の土地の持分割合(被相続人70%、他者30%)が建物の持分割合(被相続人30%、他者70%)よりも大きい場合、被相続人の土地の持分(70%)のうち建物の持分割合に該当する部分(30%)は貸家建付地として、残りの部分(40%)は自用地として、評価します。

逆に、被相続人の土地の持分割合が建物の持分割合よりも小さい場合、被相続人の土地の持分全部を貸家建付地として評価します。

貸家建付地上の建物を他者に贈与した場合

貸家建付地として評価するには、原則として土地と建物の所有者が同一でなければなりません。しかし、相続開始前に被相続人が貸家建付地上の建物を他者に贈与して土地と建物の所有者が同一でなくなった場合でも、例外的に貸家建付地として評価できる場合があります。そのためには、他者から地代が支払われておらず、贈与前の建物の賃借人との賃貸借契約が贈与後も継続していることが必要です。

例えば、建物を不動産管理会社に一括して賃貸し、同会社が各借家人に転貸している場合でも、贈与前の建物所有者と不動産管理会社との賃貸借契約が贈与後も継続していれば、貸家建付地として評価できます。

貸家建付地と小規模宅地特例

貸家建付地については、小規模宅地特例の一つである貸付事業用宅地等の特例を適用して、200㎡を限度として、相続税評価額を減額することができます。この特例の適用を受けるためには、相続税の申告期限まで貸家建付地の所有を継続し、かつ、貸付事業を継続していることが必要です。

小規模宅地特例には、特定居住用宅地等の特例や貸付事業用宅地等の特例など数種類あり、組み合わせて適用することができます。しかし、適用できる土地の面積には上限があります。遺産の中に小規模宅地特例の対象となる土地が複数ある場合、どの土地に特例を適用するかにより、相続税の額が違ってきますので、慎重にご検討下さい。

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