遺産分割協議で合意できない!特例が適用できないのか?

遺産を共有のまま放置するとさまざまな問題が発生するので、遺産分割は早期に行うのが望ましいです。もし、協議がまとまらない場合は、遺産分割調停で第三者を間に入れて協議することができます。相続税の申告期限までに遺産分割ができない場合には、共有のまま仮申告しておき、遺産分割が決まってから、申告し直すことになります。共有のままだと相続税減税の特例が適用できない場合でも、再度の申告により適用できる場合があります。

目次

遺産分割できない場合の問題点

遺産分割とは

人(被相続人)が亡くなり、相続人が複数いる場合、遺言がなければ、被相続人の財産は、全て、相続人の共有になります。この共有財産を、どの相続人がどの財産を引き継ぐかを決めることを遺産分割といい、そのための協議を遺産分割協議といいます。

相続財産の凍結

遺産分割協議がまとまらず、遺産が共有されたままだと、その処分には、相続人全員の同意が必要となり、機動的な処分ができなくなります。例えば、銀行預金を、葬儀費用や相続税の支払いに使ったり、不動産や自動車などの財産を売却したりしたくても、一人でも反対するとできません。全相続人の同意が得られず、相続財産を利用できない状態のことを、俗に相続財産の凍結といっています。

近隣に迷惑をかけるおそれ

例えば、相続財産の中に空き家があり、それを引き継ぐ者が決まらない場合、誰もその空き家を管理せず放置されてしまうと、建物が老朽化して、崩れたり、庭木が育ってしまって、道路や隣接地に張り出してしまい、近隣に迷惑をかけてしまう恐れがあります。

権利の複雑化

遺産分割がなされないまま長期間放置すると、その間に相続人が亡くなり、二次相続が起こり権利関係が複雑になってしまうという問題があります。例えば、相続開始時は、相続人は兄弟3人であったが、その後兄弟が亡くなり、その子が相続したとします。各人に3人の子がいた場合、相続人は9人になってしまいます。さらに放置すれば、さらに増えていくでしょう。代を経ることにより人数が増えるばかりでなく相続人同士の関係性は希薄になり疎遠になります。行方の知れない者か出てきたり、連絡が取れても、一切協力してくれないという人もいるかもしれません。そうすると、例えば、空き家となった不動産を処分しようにも、処分ができないというリスクがあります。明治時代から放置され、現在、相続人が100人を超えてしまったという例もあります。

遺産分割調停とは?

問題が大きくなる前に、当人同士では遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所に申し立てて、遺産分割調停を利用することにより解決を図ることを検討しましょう。遺産分割調停とは、家事審判官(裁判官)とふたりの調停委員で構成される調停委員会が、相続人の間に立ち、中立公正な立場から、各相続人の言い分を聞き、具体的な遺産分割方法を提案するなどして、遺産分割協議をまとめるようにする手続です。

調停を使うメリット

遺産分割調停では、関係がこじれてしまい、相続人間では話し合いをするのが困難な場合でも、直接顔を合わせることなく、調停委員を介して話し合いを進めることができ、また、第三者の視点からアドバイスを受けることができるので、冷静に協議することが可能になります。

調停を進めるコツ

相続人同士の関係性や過去のしがらみなどの周辺事情や、最終的に目指しているゴールなどを包み隠さず調停委員に伝えておくことが、調停を円滑に希望に沿って進めるコツとなります。不利益な事実でも調停委員に伝え、全体像を理解してもらうことが肝要です。相手方には伝えたくないことは、その旨断って調停委員に伝えれば、相手方には秘密にしておいてもらえます。

遺産が未分割の場合の相続税申告

相続税の申告義務

相続税の申告は、相続があったことを知ってから10か月以内にしなくてはなりません。10か月というのは、意外と短く、その間に遺産分割協議がまとまらないこともよくあります。それでも、申告期限が延長されることはありません。期限までに申告しなければ、無申告加算税や延滞税がかかるというリスクがあります。

未分割での申告

申告期限までに遺産分割協議がまとまらなかった場合は、法定相続分によって分割したと仮定して、相続税の申告・納付を行い、後日、分割が決まってから、改めて、修正申告(相続税を払いすぎている場合)又は更正の請求(追加で相続税を納めなければならない場合)を行います。修正申告については期限はありません。更正の請求は、分割後4か月以内にしなくてはなりません。

相続税申告の特例を後から適用するためには?

配偶者税額軽減の特例や小規模宅地等の価額の特例などは、未分割では適用されません。これらの特例の適用を受ければ、相続税がゼロになる場合でも、特例の適用がなければ、相続税がかかる場合、申告期限内に未分割で申告し、納税しなければなりません。

これらの特例の適用を受ける予定がある場合には、未分割の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておきましょう。申告期限から3年以内に分割できれば、その後4か月以内に更正の請求を行うことにより特例の適用を受けることができます。

また、やむを得ない事情があり3年以内に分割ができなかった場合、税務署長の承認を受けておけば、その事情が解消されてから4か月以内に分割できれば、特例の適用を受けることができます。この場合も、分割後4か月以内に更正の請求を行う必要があります。

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