相続放棄しても支払われる生命保険金(みなし相続財産)とは

みなし相続財産

みなし相続財産とは、被相続人の遺産ではないものの、相続税の課税対象になるものをいいます。代表的なものは、生命保険金と死亡退職金ですが、他にも、生命保険契約に関する権利や定期金に関する権利などがあります。遺産ではないので、みなし相続財産は、相続放棄をしても受け取ることができ、遺産分割や遺留分侵害額請求の対象にはなりません。

目次

みなし相続財産となる生命保険金・死亡退職金

みなし相続財産とは

みなし相続財産とは、民法上は相続財産に含まれないが、相続税法上は、相続税の課税対象となるものをいいます。みなし相続財産の代表的なものは、死亡保険金と死亡退職金です。

みなし相続財産となる生命保険金

被相続人が死亡し、その相続人が死亡保険金を受け取った場合で、被相続人がその生命保険の保険料を負担していた場合には、死亡保険金は、みなし相続財産となり相続税の課税対象となります。ただし、法定相続人一人当たり500万円までは非課税です。

みなし相続財産となる死亡退職金

被相続人の死亡により、相続人が、雇用主等から被相続人に対して支給されるべきであった死亡退職金を受け取る場合、死亡退職金はみなし相続財産となります。ただし、被相続人の死亡後3年以内にその支給額が確定したものに限ります。

実質的に被相続人の死亡退職金として支給される金品であれば、死亡退職金、退職手当金、功労金などの名目の如何にかかわりません。金品とあるとおり、現物で支給されるものも含まれることにご注意ください。

他方、遺族に対して支払われる弔慰金は、原則としてみなし相続財産にはなりません。しかし、金額が一定額を超える場合には、死亡退職金として、みなし相続財産となります。

この一定額とは、被相続人の死亡が業務上の死亡であった場合には死亡当時の普通給与の3年分に相当する額、業務上の死亡ではなかった場合には普通給与の半年分に相当する額になります。

みなし相続財産となった死亡退職金は、相続税の課税対象となります。ただし、法定相続人一人当たり500万円までは非課税です。

みなし相続財産となるその他財産

生命保険契約に関する権利

相続人が保険契約者である生命保険契約の保険料を被相続人が負担していた場合、その生命保険契約に関する権利は、みなし相続財産となり相続税の課税対象となります。例えば、子ども(相続人)の個人年金保険契約の保険料を父親(被相続人)が負担していたような場合です。生命保険契約に関する権利の価額は、相続開始の時にその契約を解約するとした場合に支払われることになる解約返戻金や剰余金の分配額等の額によって評価します。

定期金に関する権利

定期金とは、個人年金保険契約の年金など、ある期間にわたり給付を受ける金銭をいいます。

被相続人の死亡により、相続人が、被相続人が受けるべき定期金の受取人となった場合で、被相続人がその定期金給付契約の保険料を負担していた場合には、その定期金に関する権利は、みなし相続財産となり相続税の課税対象となります。定期金に関する権利の評価方法は、相続開始の時に定期金給付事由が発生しているものと、発生していないものとで異なります。

定期金給付事由が発生しているもの(被相続人が既に給付金を受けていたもの)については、
①解約返戻金の金額、
②定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合には一時金の金額、
③給付金の1年当たりの平均額を基に一定の方法で計算した金額
のうち、いずれか多い金額により評価します。

定期金給付事由が発生していないものについては、原則として、解約返戻金の金額により評価します。

みなし相続財産となるその他の財産

上記のほか、遺言により弁済を免除された債務や被相続人の死亡前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産などもみなし相続財産になります。このほかにも、みなし相続財産になるものがありますので、被相続人の死亡により財産や利益を得た場合には、みなし相続財産に当たるか否かを確認する必要があります。

相続放棄とみなし相続財産

相続人が相続放棄をした場合でも、みなし相続財産を受け取ることができます。みなし相続財産は、民法上の相続財産ではないからです。ただし、相続放棄をしてしまうと、法定相続人でなくなるため、上記の生命保険金や死亡退職金の非課税枠内の金額であっても、相続税が課税されることになります。

みなし相続財産と遺産分割・遺留分

みなし相続財産は遺産分割の対象外

みなし相続財産は、遺産分割の対象とはなりません。というのは、みなし相続財産は、民法上の相続財産ではなく、受取人固有の財産と考えられるからです。例えば、生命保険契約において死亡保険金の受取人が「相続人」となっている場合、遺産分割協議を経なくても、法定相続人は、法定相続分の割合の死亡保険金を受け取ることができます。

遺留分侵害額請求の対象となる場合

みなし相続財産は、被相続人の遺産ではありませんので、原則として遺留分侵害額請求の対象にはなりません。しかし、一部の共同相続人が受け取った生命保険金の額が過大であり、共同相続人間に著しい不公平がある場合には、特別受益に準ずるものとして、遺留分侵害額請求の対象となる場合があります。

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