相続税の税額控除は基礎控除をはじめ、該当するものがあれば税額がゼロになるまで適用できます。生前贈与との兼ね合いで、還付になることもめずらしくありません。相続税は贈与のみが節税対策となるため税額控除は重要な税額を抑える手段です。税額控除が複数適用できる場合は、控除の計算に順番があります。ここでは税額控除の種類と計算方法について解説します。
相続税の税額控除の計算方法
相続税を少しでも低く抑える方法に「税額控除」があります。専門家へ依頼すると、最も税額が低くなる方法を選択するため適用できる税額控除はすべて適用するのが一般的です。税額控除は所得控除とは異なり、直接計算した税金から控除できるのが特徴です。具体的に税額控除とはどのような計算なのでしょうか。
税額控除とは
相続税で適用できる税額控除は次に掲げるものです。(誰もが受けられる基礎控除は除きます)
・贈与税額控除
・未成年者控除
・障害者控除
・相次相続控除
・外国税額控除
これら5つの控除のほかに配偶者控除もありますが、すべての相続人に該当するとは限りません。しかし該当した場合には次の方法で税額控除を計算します。
税額控除の計算
税額控除には控除を適用する順番があります。それは先に説明している順番で控除します。もし配偶者控除がある場合には、贈与税額控除と未成年者控除との間に「配偶者控除」を入れて計算します。
もし、税額がゼロになった場合にはゼロになった時点での控除をすべて適用できます。ただし相続時精算課税贈与税額がある場合に税額がマイナスになったときには還付が受けられます。すこし計算が複雑に感じる場合には専門家に相談する方が、間違いのない申告ができるのでおすすめです。
相続税申告における贈与税額控除
相続が発生した直近3年以内に贈与税を納付している相続人が該当します。贈与税として先に税金を納めているので、その税金分を相続税額から控除します。また、税金として納めているのでその金額が多額になったとしても控除の上限はありません。300万円納付していればその全額を相続税から控除します。
贈与税額控除の計算方法
相続税額から直接控除するといっても、実際の計算方法では贈与の対象となっている財産をいったん相続財産として「持ち戻し」をします。その上で相続税を計算し、納付している贈与税を差し引きます。これと同時に、110万円以下の暦年贈与(非課税)がある場合には、その贈与も持ち戻しの対象で同じように計算します。
相続税申告における未成年者控除
未成年者の相続人がいる場合、その未成年者が20歳になるまでの年数×10万円が控除できます。このとき、1年に満たない期間がある場合(例えば3カ月など)は、切り上げて1年として計算します。ただし、その未成年者が過去に相続で未成年者控除の適用を受けていた場合には、控除額の制限を受ける可能性があります。
相続税申告における障害者控除
相続人の中に85歳未満の障害者がいる場合に適用できます。ただし障害者控除は2種類あり、どちらに該当するか判別しなければなりません。
障害者控除の場合は、相続人の障害者が85歳になるまでの年数×10万円で計算します。
特別障害者の場合は85歳になるまでの年数×20万円となっています。この控除が受けられるのは障害者手帳の区分が1級もしくは2級、または精神障害者保健福祉手帳が1級の人が該当します。
相続税申告における相次相続控除
今回の相続が一般的に耳にする「二次相続」に該当する場合に注意が必要です。二次相続といっても前回の相続が10年以内に発生しており相続税を納付していることが前提です。遺言書により相続財産を受け取った人以外の人が対象です。前回の相続(一次相続)で課税された相続税の一部を、今回発生している相続(二次相続)から控除できます。
この計算をする場合には、次の5つがポイントです。
・一次相続で納税した、該当している被相続人の相続税額
・今回の相続で該当する被相続人が引き継いだ相続財産
・今回の相続財産の総合計
・該当している被相続人の相続財産の合計
・一次相続から今回の相続までの期間。(1年未満は切り捨て)
これだけを見ると少し面倒な計算のように感じますが、一次相続の時の書類が残っていれば、どれも簡単に計算ができます。また専門家に相談に行く場合も、この資料を持っていけば、該当するかどうかの判定は簡単にできます。申告書や遺産分割協議書があれば、前回の相続の概要がおおむね把握できるでしょう。
相続税申告における外国税額控除
相続税に限らず、外国税額控除は「二重課税の防止」が目的です。海外で課税されるものがある場合、その部分だけ国内では課税しないというのが大まかなイメージです。相続税の場合は、国外財産を相続した者がその対象です。控除できる上限は次のいずれか少ない方の金額です。
・国外で納税する相続税に相当する税額
・国内の相続税額×国外財産の価額÷相続財産総額
この控除の適用も、未成年者控除と同様に以前発生した相続に対してこの控除を適用していた場合には、控除上限に制限を受ける場合があります。この計算は少々難しいため、よくわからない場合には、税理士に相談するほうがよいでしょう。