相続財産には、相続税の課税対象となる財産と、課税対象とならない財産とがあります。相続税の課税対象となる財産には、民法で決められた本来の相続財産と、民法上では相続財産に該当しない財産でも、相続税上では相続財産とみなされるみなし相続財産などがあります。そして、それぞれに細かい決まりが設けられています。今回は、相続税が課される財産について詳しく解説していきます。
相続税の課税対象となる財産とは
相続税の課税対象となる財産には、本来の相続財産、みなし相続財産、相続時精算課税制度を適用した財産、納税猶予制度を適用した財産、相続開始3年以内の間に贈与した財産などがあります。
本来の相続財産とは?
本来の相続財産は、民法の決まりによって相続され取得した財産、または遺贈された財産のことをいいます。
現金や預貯金、有価証券、土地、建物、自動車、書画骨董、宝石などです。
また、著作権や特許権などの権利や、貸付金などの金銭債権も該当します。
個人事業主の場合は、売掛金などの営業債権や店舗の保証金、棚卸資産などの営業用資産などが該当します。
金銭的価値があるものは、相続税の課税対象となります。
目に見えない権利の部分も相続財産
現金や預貯金、土地や建物、宝石などは目に見えてわかりやすいので相続財産だと認識しやすいですが、目に見えない権利も実は相続財産です。ゴルフ会員権や株式、電話加入権などの権利の相続財産は見落としやすいので注意が必要です。
相続財産を見落とすと申告漏れに
相続税の課税対象になる相続財産を見落とすと、相続税の申告漏れにつながります。申告漏れがある場合は、過少申告加算税を課される可能性がありますので注意が必要です。
みなし相続財産
みなし相続財産も相続税の課税対象となります。
みなし相続財産は、民法の上では相続財産ではない財産を、相続税法の上は相続財産とみなして計算していきます。
民法の上では相続財産ではありませんので、相続放棄をした人でも受け取ることができますし、遺産分割の対象とはなりません。
みなし相続財産にはいくつかのタイプがあります。
死亡保険金や死亡退職金
被相続人が亡くなったことを理由として相続人が受け取る財産はみなし相続財産となります。死亡保険金(被相続人が保険料を負担していた場合)や死亡退職金などが該当します。
なお、みなし相続財産とされる死亡退職金や死亡保険金には非課税枠があり、500万円×法定相続人の数で計算され控除されます。
保険金や個人年金などの定期金を受け取る権利
生命保険の満期保険金や解約返戻金を受け取る権利、保険金の定期金(定期的にお金を受け取れる権利)や年金(個人年金)※を受け取る権利もみなし相続財産です。
※公的年金である国民年金や厚生年金保険はみなし相続財産にはあたりません
一括贈与で贈与税の非課税の適用を受けたことのある財産
結婚や子育て資金の一括贈与、教育資金の一括贈与を受けて贈与税の非課税の適用を受けたことがある場合で、管理残高がある場合は、その管理残高はみなし相続財産となります。
特別寄与料
特別寄与者が支払を受けることのできる特別寄与料についてもみなし相続財産となります(ただし確定したものに限ります)。
相続財産法人からの財産分与
相続人が存在しなかった場合に、相続財産法人より財産分与された財産についてもみなし相続財産となります。
免除された債務
亡くなった人にお金を借りていたが、遺言などにより返さなくてもよくなった債務についても、みなし相続財産として扱われます。
なお、みなし相続財産の対象となるのは、被相続人が亡くなったことによる相続や遺贈により財産を取得した人に限ります。
相続時精算課税制度を適用した財産
相続時精算課税制度の適用を受けて、被相続人の生前に取得した贈与財産も相続税の課税対象となります。
この制度を利用すると、生前の贈与の際には2500万円までは受贈者に対する贈与税がかからないという特例がありますが、贈与者である被相続人が亡くなった時には、相続時精算課税制度の適用を受けて取得した贈与財産について、相続税の課税対象となります
なお、相続税清算課税制度の適用を受けて既に納めた贈与税がある場合は、相続税から控除されます。
納税猶予制度を適用した財産
非上場株式等の贈与税の納税猶予制度の特例の適用を受けて取得した株式(経営承継円滑化法による)も、相続税の課税対象となります。
非上場株式の贈与税の納税猶予制度の適用を受けた株式とは、会社の後継者が贈与を受けた一定の非上場株式等にかかる贈与税の額で、非上場株式等の贈与者が亡くなる日等までの納税を猶予される株式のことをいいます(一定の要件があります)。
相続開始3年以内間に贈与した財産
被相続人が亡くなる3年以内の間に財産の贈与を受けているとき(生前贈与)も相続税の課税対象となります。
ただし、一定の特例(配偶者控除の特例など)を受けた額の部分を除きます。また、その贈与に対して贈与税が課税されたかどうかは関係なく相続税の課税対象となります。