相続税を納めるお金が無いときの延納と物納

自宅や事業用資産などを相続したものの現金がなく、相続税が納付できないという場合があります。このような場合のため、相続税の延納や物納という救済措置が設けられています。延納や物納を申請せずに相続税の納付をしないと高額な延滞税がかかりますから、納付が困難な場合には、期限前に延納や物納の申請をすることを検討しましょう。

現金一括納付の原則

相続税は、現金で一括納付するのが原則です。期限までに納付しないと延滞税が、また、納付できないからといって確定申告をしないと、無申告加算税がかかってきます。

納付が困難な場合の救済措置

遺産が不動産他の物のみで現金がない場合など、期限までに相続税が納付できない場合もあります。そのような場合の救済措置として、「延納」及び「物納」という制度が設けられています。延納や物納にすると、納付完了までの間、利子税が加算されますが、税率は延滞税に比べると格段に低く抑えられています。延納や物納にできるのは、相続税の本税だけで、加算税、延滞税及び連帯納付責任額については対象外です。

相続人間の連帯納付義務

複数の相続人がいる場合、相続人間に連帯納付義務があります。自分の相続税を納付した場合でも、他の相続人(相相続人)が納付していない場合、相相続人の分の相続税及び延滞税を納付しなければなりません。しかし、相相続人が延納の許可を得た場合には、連帯納付義務はなくなります。相相続人が相続税の納付が困難である場合には、連帯納付責任を免れるため、相相続人に延納や物納の手続きをとることを検討してもらいましょう。

延納(分割払い)

納付期限までに納付することが困難な場合、その旨申請することにより、分割払いにできる場合があります。これを「延納」といいます。延納できる期間は、原則として5年以内ですが、遺産の50%以上が不動産等(不動産、立木、不動産上の権利、事業用資産、同族会社の株式など)である場合、最長20年まで延長することができます。

物納(取得した遺産の中から金銭以外の物を納付すること)

上述のとおり、相続税は現金納付が原則です。しかし、延納によっても現金納付が困難な場合、その旨申請することにより、遺産の中から現金以外の物を納付することができます。これを「物納」といいます。

目次

延納の条件

延納の条件は、 (1)相続税の納期限(期限後申告の場合は申告書提出日)までに必要書類を提出すること、(2)相続税の額が10万円を超えていること、(3)現金一括納付が困難な理由があること、(4)延納税額に相当する担保を提供すること(延納税額が100万円以下で、延納期間が3年以下である場合は不要)です。

必要書類

延納申請に必要な書類は、(1)相続税延納申請書、(2)金銭納付を困難とする理由書(相続税延納・物納申請用)、(3)延納許可限度額算出資料、(4)担保目録及び担保提供書、(5)不動産等の財産の明細書(遺産のうち不動産等の価額割合が75%以上の場合のみ)、(6)担保提供関係書類(担保物件の登記事項証明書、固定資産税評価証明書など)です。

金銭納付を困難とする理由書(延納許可限度額)

金銭納付を困難とする理由書に下記の項目等について金額等を順に記載することにより、延納許可限度額の算出ができます。

納期限において、申請者が、現金、預貯金、換価が容易な財産を有している場合、その合計額から、3か月分の生活費(生計を一にする親族のものを含む)及び1か月分の事業の運転資金を差し引いた残額は、現金で納付しなければなりません。この現金納付額を超える分の相続税額が延納許可限度額になります。

担保

担保として認められるのは、国債、地方債、社債、土地、建物、船舶・飛行機・自動車、建設機械などです。

これらの財産であっても、担保権が設定されているもの、処分が禁止されているもの、係争中のもの、売却見込のないもの、共有持分などは、担保とすることはできません。

物納の条件

物納の条件は、 (1)相続税の納期限(期限後申告の場合は申告書提出日)までに必要書類を提出すること、(2)延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること、(3)物納申請財産が物納に充てられる財産の要件を充足することです。

必要書類

物納申請に必要な書類は、(1)物納申請書、(2)金銭納付を困難とする理由書(相続税延納・物納申請用)、(3)物納許可限度額算出資料、(4)物納手続関係書類(物納申請財産の登記事項証明書、公図、有価証券の写しなど)です。

金銭納付を困難とする理由書(物納許可限度額)

金銭納付を困難とする理由書に下記の項目等について金額等を順に記載することにより、物納許可限度額の算出ができます。

延納許可限度額(上記参照)から延納によって納付できる額を差し引いた残額が、物納許可限度額になります。延納によって納付できる額は、(1)申請者の年間の収入見込額から生活費(生計を一にする親族のものを含む)及び事業の運転資金を差し引いた額に最長延納年数を乗じた額に(2)3か月分の生活費及び1か月分の事業の運転資金を加算した額となります((2)は、(1)と延納許可限度額の算出において重ねて差し引かれているため足し戻します)。また、おおむね1年以内に見込まれる臨時収入及び臨時支出がある場合には、さらに、臨時収入を加算し、臨時支出を差し引きます。

物納に充てられる財産

物納に充てられる財産の要件は、(1)申請者が取得した遺産で日本国内にあること、(2)管理処分不適格財産(担保権の設定がされているものや権利の帰属に争いがあるもの、共有持分、遺産分割協議が未了の財産、遺留分減殺請求の対象となっている財産など)でないこと、(3)物納申請財産の種類及び順位に従っていること、(4)物納劣後財産に該当する場合は、他に適当な価額の財産がないこと、⑤財産の価額が物納申請税額を超えないこと、です。

物納申請財産の種類及び順位は、第1順位が「不動産、船舶、国債、地方債、上場株式等」、第2順位が「非上場株式等」、第3順位が「動産」となります。

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