外国(海外)にある資産を相続することになった場合に、その資産が日本の相続税の対象になるのかならないのか、外国でも納税が必要になるのか、など、わからないことが多いと思います。また、日本の相続の手続きとは違う外国独自の相続手続き方法なども知っておきたいところです。今回は、外国(海外)にある資産の評価について詳しく解説します。
海外資産(国外財産)の相続の手続き
海外資産(国外財産)の相続の手続きは国際相続ともいわれます。外国に資産がある場合は、その資産がある国によって、どのように相続の手続きを進めるかが違ってきます。
基本的には、日本の法律に従って遺産の分割を行います。相続人は、法定相続分という民法で決められた分割割合に従って分割をします。
もし、遺言がある場合は、原則的には遺言に従うことになります。また、遺産分割協議が必要な場合は遺産分割協議をします。
外国に不動産がある場合は国によって手続きが違う
外国に不動産がある場合は、その国によって相続の取り扱いが異なってきます。
相続分割主義といって、不動産とそれ以外の財産を分けて考える主義の国である場合は、その不動産が所在する国の法律に従って手続きを行うことになります。
そして、その手続き方法は、日本とは異なった手続き方法となります。
このように、日本と外国との両方に財産がある場合は、両方の国で手続きが必要になるでしょう。
海外資産(国外財産)の納税義務者は
海外資産(国外財産)の納税義務者には、①居住無制限納税義務者と②非居住無制限納税義務者の2種類があります。相続や遺贈によって財産を取得したときに、日本に住んでいるか、住んでいないかによって区別されています。
無制限納税義務者とは、日本にある資産と外国にある資産のすべてに日本の相続税が課税される人のことをいいます。
居住無制限納税義務者
居住無制限納税義務者とは、相続や遺贈によって財産を取得したときに、日本に住んでいる人で、以下に該当する人のことをいいます。
①一時居住者ではない
一時居住者とは、相続や遺贈によって財産を取得したときに在留資格がある人です。そして、相続や遺贈によって財産を取得する前の15年の間に、10年以内の期間で日本に住んでいた人のことをいいます。
②一時居住者であるが、被相続人が、一時居住被相続人、または非居住被相続人ではない
一時居住被相続人とは、相続や遺贈によって財産を取得したときに在留資格があり日本に住んでいた被相続人です。そして、相続や遺贈によって財産を取得する前の15年の間に、10年以内の期間で日本に住んでいた人のことをいいます。
非居住被相続人とは、相続や遺贈によって財産を取得したときに日本に住んでいなかった被相続人のことをいいます。そして、相続や遺贈によって財産を取得する前の10年以内に日本に住んでいた間に日本国籍をもっていなかった人、または、相続や遺贈によって財産を取得する前の10年以内に日本に住んでいなかった人のことをいいます。
非居住無制限納税義務者
非居住無制限納税義務者とは、 相続や遺贈によって財産を取得したときに、日本に居住していない人で、以下に該当する人のことをいいます。
①日本国籍がある場合
日本国籍がある場合は、相続や遺贈によって財産を取得する前の10年以内に日本に住んでいたことがある人、または、相続や遺贈によって財産を取得する前の10年以内に日本に住んでいたことがない人で、被相続人が一時居住被相続人、または非居住被相続人ではない人のことをいいます。
②日本国籍がない場合
日本国籍がない場合は、被相続人が一時居住被相続人、非居住被相続人、または非居住外国人ではない人のことをいいます。
非居住外国人とは、平成29年4月1日から相続や遺贈によって財産を取得したときまで引き続いて日本に居住していない、かつ、日本国籍がない人のことをいいます。
米国のプロベートとは
アメリカでは、遺言があるかないかにかかわらず、裁判によって相続の手続きを行います。その相続手続きのことをプロベートといいます。プロベートはアメリカの他にも、カナダ、ニュージーランド、香港、シンガポールなどの国で採用されています。
財産は、不動産だけではなく動産も基本的にはプロベートの対象となります。
そして、裁判によって手続きを行うので、財産の管理は裁判所が行います。
プロベートは、数カ月、長い場合は1年から3年、場合によってはそれ以上かかる場合があります。また、弁護士などの専門家に支払う費用も発生します。
外国税額控除とは
外国税額控除とは、同じ相続資産に対して、日本で課税された相続税と外国で課税された相続にかかる税金の2種類が二重で課税されることを防ぐための控除です。
①外国で納税した相続にかかる税金の額②日本で納税する相続税の額×(外国資産の額÷相続財産の額)のいずれか少ないほうの金額を控除することができます。
外国税額控除を受けることのできる人は、相続により外国資産を相続した人で、その外国資産にかかる税金を外国で課税された人が該当します。