被相続人が亡くなったことにより取得した財産には、相続税の課税対象とされる財産と課税対象とされない財産があります。そのうち、相続税が課税対象とされない財産(非課税財産)にはどのようなものがあるのか、普段から財産の種類を知っておくことで、いざというときの節税の対策にもなります。今回は、相続税が課されない財産について詳しく解説します。
相続税の課税対象とならない財産とは
相続税の課税対象とならない財産は主に
・墓地や墓石、仏壇や仏具、仏像、庭内神し
・公益な事業のために使われる財産
・心身障害者扶養共済制度の給付金を受けとる権利
・被相続人が経営していた幼稚園や養護学校、盲学校など
・生命保険金や退職手当金など
・国や地方公共団体、特定の公益法人へ寄付した財産
などがあります。
墓地や墓石、仏壇や仏具、仏像、庭内神しなど
日常、礼拝をしているものが該当します。墓地や墓石、仏壇や仏具、仏像、神棚、庭内神し、などです。ただし、骨董品などで高額なものや、高価なお墓を立てた場合などは相続税の対象となります。売ることができて金銭に変えられるものについては相続税の課税対象となりますので注意が必要です。
公益な事業のために使われる財産
慈善活動、宗教団体、学術などの公の利益のために使われることが確実であるものについては、相続税の課税対象となりません。ただし、規模や認知度などの条件があります。
心身障害者扶養共済制度の給付金を受けとる権利
心身に障害がある人を扶養している人が給付金を受けとる権利を相続した場合、相続税の課税対象となりません。
被相続人が経営していた幼稚園や養護学校、盲学校など
被相続人が経営していた幼稚園などで、一定の要件をみたすものは事業用財産として相続税の課税対象とはなりません。
なお、被相続人の事業が確実に相続されることが条件とされています。
弔慰金や葬祭料、花輪代など
被相続人の死亡により会社から遺族へ支払われる弔慰金や花輪代などは、相続税の課税対象となりません。ただし、実質退職手当金などに該当すると認められた場合は相続税の課税対象となります。
また、①業務上の死亡の場合は普通給与※の3年分②業務上の死亡以外の場合は普通給与の半年分、を超える部分に相当する金額の弔慰金などは、退職手当金等として相続税の課税対象となります。
※普通給与とは、被相続人が亡くなった時の、賞与以外の給与の額です
その他の相続税が非課税になる財産
不特定多数の人が通行するために利用し、通り抜けることが可能な私道は相続税の課税対象となりません。
また、配偶者短期居住権も相続税の課税対象とはなりません。
配偶者短期居住権とは、相続が開始されたとき(被相続人が亡くなったとき)に、被相続人の持っている家に無償で住んでいた配偶者は、一定の期間、その家に無償で住み続けることのできる権利(店舗に使っている場合や賃貸している部分を除きます)のことをいいます。
配偶者は被相続人が亡くなってから最低6ヶ月は住み続けることが保障されています。
被相続人が亡くなってから6ヶ月以内に遺産分割によりその家の帰属が決まっている場合は被相続人が亡くなってから6ヶ月、遺産分割によるその家の帰属の決定が6か月を超えた場合は遺産分割が決定するまで住み続けることができます。
配偶者が相続放棄をした場合や、第三者に遺贈された場合には、その家を取得した人から配偶者短期居住権の消滅請求をうけてから6か月は住み続けることができます。
被相続人が亡くなったことにより発生した未支給年金や、準確定申告の還付加算金も相続税の課税対象とはなりません。
香典も、相続税の課税対象ではありません。
非課税枠がある財産
非課税枠(相続税が課税されない部分)のある財産の、非課税の部分の財産も相続税の課税対象とはなりません。みなし相続財産といわれる生命保険金や退職手当金もそれにあたります。
生命保険金や退職手当金など
被相続人が死亡したことによって取得した生命保険金のうち、500万円に法定相続人の人数をかけた額は相続税の課税対象にはなりません。
なお、法定相続人の数には、相続放棄をした人を含めます(相続の放棄がなかったものとして扱います)。また、法定相続人の中に養子がいる場合には、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人として法定相続人の数に含めます。
被相続人が亡くなったことによって取得した退職手当金なども、生命保険金の場合と同じ扱いになります。退職手当金のうち、500万円に法定相続人の人数をかけた額は相続税の課税対象となりません。
退職手当金等というのは、名目がどのようなものであっても、実質的に退職手当金として支給されるお金のことをいいます。
寄付した場合
相続または遺贈によって取得した財産を、相続税の申告期限までに国や地方公共団体、特定の公益法人または、認定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄付した場合などにも相続税は課税対象とされません。
また、特定の公益信託の信託財産とする目的で支出した場合も相続税は課税対象となりません。
なお、特定の公益法人に寄付をする場合は、①特定の公益法人が既に設立されており、設立するための寄付ではないこと②特定の公益法人が寄付を受けてから2年以内に公益事業の用に供すること、などの決まりがあります。