自分が亡くなった後の財産をどうしたいかの意思をを示す書面が遺言書です。そして、遺言書には種類があります。それぞれの遺言書にはメリットデメリットがありますので、自分のライフスタイルにあった遺言書を選ぶのがよいでしょう。また、遺言書の書き方は、遺言を書く人(遺言者)のケースによってさまざまです。今回は、遺言書の書き方について解説します。
なぜ遺言書を書くか、その効力
遺言書は、故人が「自分の財産を誰にあげたいか」の意思を示すものです。遺言書にて、故人が希望する財産の承継の仕方を示しておくことによって、相続人間のトラブルを未然に防ぐ効果もあります。
また、遺言があっても、さらに遺産分割協議などをすることがありますが、その際にも、故人の意思である遺言書の内容が尊重されます。
遺言は、法律に定められた決まりに従っていなければ効力が生じません。そのため、遺言を書く際には、その内容が決まりに従っているかどうか気を付けなければいけません。
遺言書には、財産を誰に渡すかだけではなく、遺言執行者を決めること、隠し子がいる場合は遺言による認知をすること、財産を渡したくない人がいればその旨を書くこと、保険金の受取人を変更することもできます。
遺言書の種類
遺言書の書き方には3つの種類があります。以下でそれぞれについて解説します。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が自筆で書く遺言です。
法改正により、財産目録の作成は自筆以外(パソコンなど)でも可能となりました。財産目録の各ページには署名押印が必要です。
遺言者は、全文に日付、住所、氏名を自筆、押印します。押印する印鑑は必ずしも実印でなくてもよいですが、可能であれば実印のほうがよいでしょう。なお、代筆は認められませんので、必ず遺言者本人が書くことが求められます。
遺言書を封筒に入れる際には、封をすることは特に決められていませんが、偽造などを防ぐ意味でも、封印しておくのがよいでしょう。
自筆証書遺言は自宅などで保管するか、または、令和2年7月からは、法務局で保管することもできるようになりました(有料)。
遺言者が亡くなった際には、相続人による家庭裁判所への検認(遺言の内容と存在を相続人に知らせ、その内容を明確にするためのものです)の申立てが必要ですが、法務局で保管している自筆証書遺言は、検認が不要です。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、遺言書の原本を公文書として公証役場で保管する遺言です。
遺言者は、公証役場(公証センター)で、遺言者が遺言にしたい内容を公証人に伝えます。そして、聞き取った内容を元に、公証人が法律に基づいた遺言書を作成します。
後日、二人以上の証人が立ち合いのもと、作成された遺言書を確認し、遺言者と証人二人の署名と実印を押印します。
なお、病気などで公証役場に出向くことが困難な場合は、公証人に来てもらうことも可能です。
遺言者が亡くなった際には、相続人による家庭裁判所への検認の申立ては不要です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言者が自分で書いた遺言の内容は秘密のままで、公証役場(公証センター)にて、その存在のみを公証してもらう遺言です。
公正証書遺言と同様に、二人以上の証人が必要です。
秘密証書遺言は自筆である必要はなく、代筆でもパソコンなどを使って作成することも認められています(ただし、署名と押印は必要)。封印は、遺言書に押印した印鑑を使用します。秘密証書遺言の保管は、遺言者が行います。
遺言者が亡くなった際には、相続人による家庭裁判所への検認の申立てが必要です。
遺言書の書き方
遺言書には、誰にどんな財産を渡すのか(相続させる旨の遺言や特定財産承継遺言)、誰にどのような割合で渡すのか(相続分の指定)、銀行預金を解約して複数の相続人で分ける場合にどのように分けるのか、相続人が遺言者よりも先に死亡していた場合の次の相続人の指定(予備的条項)、遺言に書いてある財産以外の財産が発生したときにはどうするのか、などを明確に記載する必要があります。
そして、遺言の日付、遺言者の住所と氏名を記載して、押印します。
内容の一部を訂正する場合は、訂正箇所に訂正印を押印し、余白には訂正箇所を示す文言と遺言者の署名が必要です。訂正箇所が多くなった場合は、もう一度作成し直したほうがよいでしょう。
公正証書遺言の費用
公正証書遺言を作成するには、手数料がかかります。手数料は、遺言に書かれている財産の価額によって設定されています。また、全部の財産の価額が1億円以下の場合は、遺言加算といって1万1000円が加算されます。
公正証書遺言の原本が所定の枚数を超える場合は、1枚ごとに250円の手数料がかかります。
自宅等まで公証人に来てもらう場合は、通常の手数料が50%加算されます。
また、司法書士などに依頼する場合は、別途報酬がかかります。
叔母から甥や姪への遺言書の書き方
自分の甥や姪に財産を渡したい場合、兄弟姉妹の代襲相続で甥や姪が相続人になる場合と、そうではない場合とがあります。
遺言書には、甥や姪が相続人の場合は、相続させる旨の遺言や特定財産承継遺言などを記載します。
甥や姪が相続人ではない場合は、財産を遺贈する旨の記載をします。
また、後継ぎ遺贈型の受益者連続信託という信託契約の方法で財産を渡す方法もあります(期間の制限があります)。
ただし、甥や姪が未成年者の場合は、財産の管理権は親権者が持つことになりますので、親権者以外を管理者にしたい場合は、財産の管理者の指定も必要です。
また、生命保険金の受取人を、甥や姪に指定するという方法もあります。