相続財産の中には、上場株式や投資信託などの金融資産が含まれていることがあります。それらにかかる相続税の評価は、購入した時の価額ではなく、相続が発生した時の価額で評価します。評価に必要な株式の株価は、最近はインターネットで簡単に検索することができます。今回は、上場株式・投資信託の評価について詳しく解説します。
上場株式の相続税評価
上場株式の相続税評価は、課税時期(相続または遺贈の場合は被相続人が亡くなった日、贈与の場合は、贈与により財産を取得した日)を基準日として評価します。
そして、上場株式の評価の基準として、4つの最終価格(終値)を調べる必要があります。
①課税時期の最終価格(終値)②課税時期が該当している月の最終価格(終値)の平均の額②課税時期が該当している月の、前月の最終価格(終値)の平均の額③課税時期が該当している月の、前々月の最終価格の平均の額、のうち、最も低い価格を採用します。
これらの4つの価格を調べる理由は、課税時期の最終価格(終値)で評価を決定してしまうことで相続人が不利益にならないように、値動きの幅を持たせるためです。
課税時期が休日のために最終価格(終値)がない場合は、課税時期に最も近い日の最終価格(終値)を評価に使います。
なお、相続が開始する直前に、上場株式の売却が成立している場合は、相続財産が上場株式→売買代金請求権に変わりますので、上記のような評価方法を採用できなくなります。
上場株式の時価の調べ方
取引している証券会社より、被相続人が亡くなった日時点の残高証明書を発行してもらうことで、4つの上場株式の最終価格(終値)を知ることが可能です。また、最近は、インターネットで簡単に最終価格(終値)を検索することが可能です。JPX(日本証券取引所)のホームページでも調べることができます。
投資信託の相続税評価
投資信託の種類には、①MRF(マネーリザーブファンド)、②外貨建MMF、③一般的な投資信託、④上場投資信託(ETF・REIT)の4つがあります。そして、それぞれ相続税評価方法が違います。
MRFの評価方法
MRFの評価方法は、1口当たりの基準単価×口数+未収分配金-未収分配金に対する源泉所得税や解約手数料など、です。
MRFは1口1円であることから、未収分配金がほとんど発生しません。そのため、残高証明書の口数がそのまま相続税評価額であるといえるでしょう。
ただし、将来的に金利が上がった場合や、大きい額のMRFの場合は、未収分配金とその税金に対する計算をする必要が生じることがありますので、その場合には、上記の計算式で計算をすることになります。
外貨建MMFの評価方法
外貨建MMFの評価方法は、1口当たりの基準単価×口数×売却時の為替レート-譲渡益税+未収分配金-未収分配金に対する源泉所得税など、です。
含み益がある場合は、譲渡益税分として控除をします。また、複数の証券会社で同じ銘柄を持っている場合はそれぞれの金融機関で計算をします。
一般的な投資信託の評価方法
一般的な投資信託の評価方法は、(1口当たりの基準価格-解約コスト)×口数÷10,000-譲渡益税、です。
基準価格はインターネットで簡単に検索できます。また、取引のない日に被相続人が亡くなった場合は、課税時期の前の、直近の日の基準価格を採用します。
解約するときに発生するコストである中途解約手数料や、信託財産留保額(解約の時に投資信託に残される手数料)が発生する投資信託の場合は、それらを控除します。これらの費用は、投資信託説明書(交付目論見書)で確認することができます。
なお、含み益がある場合は、相続が発生した時に売却したとみなして譲渡益税を控除します。損益通算は必要ありません。
上場投資信託(ETF・REIT)の評価方法
上場投資信託(ETF・REIT)の評価方法は、1口当たりの基準価格×口数、です。
上場投資信託の場合は、上場株式の評価方法と同じように、4つの最終価格(終値)を調べます。
①課税時期の最終価格(終値)②課税時期が該当している月の最終価格(終値)の平均の額③課税時期が該当している月の、前月の最終価格(終値)の平均の額④課税時期が該当している月の、前々月の最終価格(終値)の平均の額、の4つのうちの、最も低いものを採用します。
課税時期が休日のために終値の価格がない場合は、課税時期から最も近い日の終値を採用します。もし、課税時期が連休の真ん中で、最も近い日が連休の前後に2つある場合は、その2つの日の終値の平均を採用します。
複数の証券取引所に上場されている株式の場合は、納税者が選んだ取引所の終値を採用することができます。
投資信託の基準価格の調べ方
投資信託の相続税評価に必要な1口当たりの基準価格と口数を調べるには 被相続人が亡くなった日時点の残高証明書を各金融機関に発行してもらうことで調べることが可能です。
また、インターネットでも1口当たりの基準価格を検索して調べることが可能です。