妻は遺族厚生年金をいくらもらえるか?その受給手続きは?

遺族厚生年金

一家の大黒柱である父親が亡くなった時は、その後の生活がとても不安なものとなるでしょう。相続にはあたりませんが、亡くなった方が会社に勤務しており、厚生年金の被保険者または被保険者だった場合に、その遺族に対して一定の条件のもとで遺族厚生年金が支給されます。今回は、遺族厚生年金について、詳しく解説していきます。

目次

遺族厚生年金とは何か?

遺族厚生年金とは、厚生年金保険法に基づき支給される年金(保険給付)の一つで、名前の通り、遺族を対象としており、残された遺族の生活を支えるための年金です。厚生年金保険は、会社に勤務されている方を対象としています。

どのような方が亡くなった場合が該当するかというと、

①厚生年金の被保険者が亡くなったとき、
②厚生年金の資格を喪失した後、被保険者であった間に初診日がある傷病によってその初診日から5年を経過する前に亡くなったとき、
③障害等級が1級または2級の障害厚生年金の受給権者が亡くなったとき、
④老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間を合わせた期間が25年以上である方に限る)、または保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間を合わせた期間が25年以上ある方が亡くなったとき、

が該当します。

また、亡くなった日の前日において、亡くなった日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者の期間があり、保険料の納付済期間と保険料の免除期間を合わせた期間が、被保険者期間の3分の2以上(=保険料の未納期間が3分の1未満)であることが条件です。

なお、経過措置として、令和8年4月1日までに亡くなった場合については、亡くなった日の前日において、亡くなった日の属する月の前々月までの1年間のうちに保険料の滞納がなければ条件は満たされます(亡くなった方が65歳以上の場合を除きます。)。

遺族厚生年金の受給資格は?

遺族厚生年金を受給できる遺族の条件ですが、亡くなった方によって生計を維持されていることが条件です(年額850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められる方は対象となりません)。

支給の対象となる遺族の順位は、①配偶者・子、②父母、③孫、④祖父母です。なお、被保険者が亡くなった当時胎児だった子どもが出生した場合も対象となります。

支給を受けることができるのが夫、父母、祖父母の場合は、被保険者が亡くなった当時に55歳以上であることが条件です。60歳までは支給が停止されますが、支給を受けることができるのが夫の場合は、その夫が遺族基礎年金の支給を受けている場合は、支給は停止されません。

支給を受けることができるのが子どもの場合は、18歳の最初の3月31日までにあり、かつ婚姻していないことが条件です(ただし、障害等級1級もしくは2級に該当する子どもの場合は、20歳までが対象です)。

遺族厚生年金の金額の目安は?

遺族厚生年金の金額は、遺族基礎年金とは違い、被保険者(被保険者だった)時の報酬の月額や要件によって異なります。そして、所定の方法で計算された老齢厚生年金の額の4分の3が遺族厚生年金の額となります。

配偶者と子どもがいる場合は、配偶者のみに支給され、子どもは支給停止になります。

子どものみで受給する場合や、父母、祖父母、孫が受給する場合に、受給できる人が複数人いる場合は、受給できる人の数で分割します。

遺族厚生年金の受給者が、同時に老齢厚生年金を受給する場合

遺族厚生年金の受給者が、同時に老齢厚生年金を受給する場合(65歳以上に限る)は、「遺族厚生年金の額」と、「遺族厚生年金の3分の2と遺族厚生年金の受給者自身の老齢厚生年金の2分の1を足した額」を比較して、どちらか多いほうを受給することになります。

そして、老齢厚生年金のほうを優先的に支給しますので、遺族厚生年金のうちの老齢厚生年金の額に相当する部分(加給年金を除く)は支給停止になります。

ただし、遺族厚生年金の受給者自身の老齢厚生年金(加給年金を除く)よりも遺族厚生年金の額のほうが多い場合は、その差額が遺族厚生年金として支給されます。

遺族厚生年金を妻が受け取る手続きは?

妻が遺族厚生年金を受け取るための必要な書類は以下の通りです。

・年金請求書(遺族給付用、日本年金機構のホームページからからもダウンロードできます)
・年金手帳
・戸籍謄本(受給権が発生した後6カ月以内のもの)または法定相続情報一覧図の写し
・世帯全員の住民票の写し※
・亡くなった方の住民票の除票※
・請求される方の収入が確認できる書類(所得証明書、源泉徴収票など)※
・子どもの収入が確認できる書類(高等学校以上の子どもが対象、在学証明書など)※
・市町村役場に提出した死亡診断書のコピーまたは死亡届の記載事項証明書
・遺族厚生年金の支給を受ける金融機関の通帳など(受給者本人の名義)
などです。

※ マイナンバーを記入した場合は省略可能です。

ほか、亡くなった原因が事故によるもの、他の公的年金を受給している場合などは別途必要な書類があります。

提出先は、近くの年金事務所や年金相談センターになります。

中高齢寡婦加算

妻に支給される遺族厚生年金に対しては、一定の条件のもとに、40歳から65歳になるまで中高齢寡婦加算があります(年額586,300円)。

該当する妻の条件は、①子どもがいない妻の場合は、夫が亡くなった当時40歳以上65歳未満であるとき、②子どもがいる妻の場合は、夫が亡くなった当時に子どもがおり、かつ妻が40歳になった当時に、受給資格のある子どもと生計を同じくしており遺族基礎年金を受給していたが、その子どもが受給資格を喪失したことで遺族基礎年金を受給できなくなったときです。

中高齢寡婦加算額は、遺族基礎年金の4分の3相当額です。

経過的寡婦加算

中高齢寡婦加算がされている妻で昭和31年4月1日以前に生まれた妻には、一定の条件のもとに65歳から経過的寡婦加算があります。加算される額は、妻の生年月日によって違います。

若年の妻のケース

夫が亡くなった当時に妻がまだ若い(30歳未満)の場合は、以下のような失権事由があります。

夫が亡くなった当時子どもがいない場合は、遺族厚生年金を受給してから5年が経過したときに遺族厚生年金の受給資格を失います。

夫が亡くなった当時子どもがいる(遺族基礎年金の受給権がある)場合は、30歳になる前に遺族基礎年金の受給権が消滅した場合は、受給権が消滅した時から5年が経過したときに遺族厚生年金の受給資格を失います。

遺族厚生年金に相続税は課されるの?

遺族厚生年金には原則として、相続税は課されません。ただし、勤めていた会社が運営を委託していた機関から退職金として遺族に支払われる年金は、亡くなった方の退職手当金等となり相続税の対象となります。

また、保険料の負担、被保険者、受取人が同一人である個人年金保険給付の残りの期間の年金を受け取った場合は、相続または遺贈により年金の受給権を受け取ったとみなされ相続税の対象となります。

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