兄弟同士や、配偶者と兄弟の遺産分割では、争いがおきやすいので注意しなければなりません。具体的な方法として、共有、現物分割、代償分割、換価分割があります。この記事では遺産分割の意味や方法、各方法のメリット・デメリットを詳しく解説します。遺産分割をよく理解し、納得のいく相続を目指しましょう。
相続の遺産分割の話し合いはタイヘン
遺産の分割は、遺産の性質や相続人の年齢・職業・精神状態などを総合的に判断して行うのが望ましいとされています。
遺産分割する前に、分割対象の遺産として認められる財産を確定できなければ話が進みません。当然ですが、今残っている財産は遺産に含まれます。それだけでなく、共同相続人全員の同意があれば、遺産分割の前に処分された財産も遺産に含むことができます。被相続人の兄弟(姉妹)が相続人であれば、2人とも同意すれば良いということです。
遺産分割は、協議つまり話し合いで行います。
しかし、遺産分割につい意見が合わなかったり、相続人が協議に応じなかったりする場合があります。そのときは、各相続人は家庭裁判所に遺産の全部または一部の分割を請求することになります。
ちなみに、遺産分割を行った後に、相続人であることが判明した者は、金銭の請求権のみ有します。
兄弟で遺産分割をおこなう方法
兄弟で遺産分割をおこなうケースは、2通りあります。1つは、被相続人に子が複数いる場合、複数の子(つまり兄弟または姉妹)で遺産分割をおこなうケースです。2つ目のケースは、被相続人の兄弟姉妹のみが相続人の場合です。
兄弟の法定相続分
相続人が被相続人の複数の子で、配偶者がいない場合なら、子たちの法定相続分は、平等です。配偶者と子が法定相続人の場合、配偶者が2分の1、子全員で2分の1を平等に分けます。
相続人が被相続人の兄弟(姉妹)で、配偶者がいない場合、原則として、兄弟が平等に相続します。しかし、被相続人の配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。
なお、遺言書がある場合はそれに書かれた割合で遺産の分割をおこないます。法定相続分に従って遺産分割をする場合は、できるかぎり公平に遺産の配分を行う必要があるでしょう。また遺言に従って遺産分割を行う場合でも遺産の価値を適正に判断すべきです。
兄弟でおこなう共有分割
遺産分割を行う方法は、共有、現物分割、代償分割、換価分割の4種類です。これらの方法にはそれぞれメリット・デメリットがあるので詳しく見ていきましょう。
まずは共有についてです。共有とは、家や土地などを、兄が1/2、弟が1/2というように所有権の割合で持ち合う制度です。共有のメリットは、共有者が協同して管理などをおこなう点です。デメリットは、共有者の1人が共有物を処分したくても、他の共有者の同意がないと売却できないことです。
兄弟でおこなう現物分割
現物分割とは物そのものを分ける遺産分割のことです。被相続人である父の遺産は、大きな土地と車の例で考えましょう。その土地の東側の土地を兄が、弟は西側の土地を、妹は父の車を相続するというようにです。なお、一つの土地を複数に分けるには、分筆登記をしなければなりません。
現物分割のメリットは分割がイメージしやすく、かつ所有権の移転がしやすいことです。現物分割のデメリットは遺産の価格の判断が難しいことでしょう。土地は場所によって大きく値段が変わるためです。現物分割が本当に適正な価格をもとに行われたのかどうかという疑問が残りかねません。また、現物分割後に不満を抱く相続人も出てくるかもしれません。
兄弟でおこなう代償分割
代償分割は、物を分けずに遺産の評価額の足りない分だけお金で補う遺産分割方法です。兄弟間の代償分割のメリットは、先祖代々所有する土地など、できるだけ分けたくない財産を分けずに済むことです。
代償分割のデメリットは財産の評価額が定まらないと、支払う金額も定まらないことです。財産の評価額が安くなれば払わなければならない金額も安くなるので、評価額について争いが生まれる可能性があります。さらに、代償金を払うべき兄弟が現実にお金を持っていなければ、あまり有効な手段ではありません。
兄弟でおこなう換価分割
換価分割は財産を一度売却してから得たお金を遺産分割する方法です。換価分割のメリットはなんと言ってもかなり公平に分割ができる点でしょう。換価分割のデメリットは今後価値が上がる可能性のある土地を売却してしまうともったいないことです。他にも売却にかかる費用の分だけお金が減ってしまうのも、デメリットになります。
兄弟の遺産分割の後で相続税はどうするのか?
相続税は、相続開始があったことを知った日から10ヶ月以内に申告しなければなりません。この相続税申告期限は、遺産分割が終わっていなくても同じです。遺産分割協議が終わっていない時は、法定相続割合に従って、相続税申告と納税を行います。兄弟姉妹の遺産分割でも、分割の有無にかかわらず課税されてしまいます。
しかし遺産分割が終わった後に、遺産分割割合で計算した相続税額が、納税額と異なる場合があります。そのときは、法定相続したとみなして課税された納税額の修正をすることになります。
課税された税金は金銭で一度に収めることが原則です。しかし相続税に関しては延納と物納という特別な納め方があります。延納は何年かに分けて税金を納める制度です。物納は相続した財産そのものを税として納める制度のことです。兄弟の遺産分割では、相続税は大きな負担となります。兄弟のうち誰がどれだけ税金負担をするかも事前に考えていた方が良いでしょう。
遺産分割をしっかり行うことによって、兄弟間の争いを避けることができます。遺産分割の知識を少し身に付けておくだけでも公平公正な遺産分割の実現ができるでしょう。